熱処理について

 

ボルトに強度を与える方法には加工硬化(冷間加工により硬く、強くなる性質)を利用する方法(強度区分3.6〜6.8)と熱処

理を利用する方法(強度区分8.8〜12.9)があります。

鋼には炭素(C)の含有量の多い少ないにより硬さや強さがちがいます。また、一定量以上の炭素を含有する炭素鋼及び合

金鋼では熱対翠により高強度が得られます。合金鋼では高強度と高靱性(粘り強さ)の両方の性質が同時に得られます。

鋼を変態点(性質が変わってしまう温度)以上まで加熱し、その後水や油の中に急冷すると非常に硬い性質が得られますが、

このままでは脆いので通常は所定の一温度範囲に再過熱します。この温度の選択により所定の強度と靱性が得られます。

前者の熱処理を焼入れ、後者を焼戻し"といいます。

熱処理は2種類に分けることができます。

 

1) 一般熱処理(焼なまし、焼ならし、焼入れ、焼戻し)

2 )表面熱処理(表面硬化法と表面強化法)

 

 

1)一般熱処理

 

焼なまし:加熱した温度からごくゆっくり(550℃まで)それ以下はやや速く冷やし、鋼を軟らかくします。

焼ならし:加熱した温度からやや速く(550℃まで)それ以下はゆっくり冷やします。鋼は適当な硬さで粘り強く全体が均一

な性質になります。

焼入れ:加熱した温度から250℃まで速く冷やします。硬く強度が非常に大きくなるが脆いため通常は必ず焼戻しをする。

焼戻し:焼き入れた鋼を再加熱し、冷やすことを焼戻しと言う。焼き入れた鋼は硬いが脆いので、強度を余り落とさないで靱性を高めます。焼戻しにはの2種類があります。

 低温焼戻し(200℃前後)耐摩耗性が目的。

 高温焼戻し(400〜600℃)一般には調質と呼ばれ強度と靱性を得るのが目的。

 

 

2) 表面熱処理

 

化学的、物理的な方法で鋼の表面を硬くする熱処理です。表面硬化法、表面強化法がありますが現在では

(900℃以上)高温で表面硬化法で行われる事が多い。

 

表面硬化法

浸炭焼入れ:低炭素鋼の表面に炭素(C)を浸み込ませてから焼入れして表面のみを硬くします。焼入れ後は、焼戻しを行う。浸炭には固体、ガス、液体浸炭がありますがガス浸炭が多く使用されている。

窒化:鋼の表面に窒素(N)を浸み込ませて硬くする方法。鋼に窒素(N)が入る丈で硬くなり焼入れはしません。

高周波焼入れ:高周波電流を使用し鋼の表面を急速に加熱し、直ちに焼入れする。その後焼戻しをする。