ねじの機械的性質について
機械的性質に関する用語
引張強さ 最大荷重 有効断面積 |
最大荷重を有効断面積で除した値 引張強さ=最大荷重(Pmax)/有効断面積(As) =N/o2(kgf/
mm2) 最大荷重:引張試験機でボルトの耐えた最大の荷重 有効断面積:AS=π/4{ (d2+(d1-H/6))/2
}2=0.785(d-0.9382Xp)2 (おねじの断面積) (応力面積、応力断面積ともいう) d2:ねじの有効径 d:ねじの外径 d1:ねじの谷径 H:0.866025P (P:ねじのピッチ) π:円周率 (H:とがり山の高さ) |
耐 力 (下降伏点) |
引張試験にてボルトに0.2%の永久伸びを生ずるであろうと言う点の荷重応力を耐力と言う、降伏点に代えて用いる。ISO規格では引張り強さの60%〜80%(3.6〜6.8)、80%〜90%(8.8〜1.29)と便宜上決めています。 例) 4.6 400×0.6≒240N (24.5kgf)/mm2 10.9 1,040×0.9≒940N (95.5kgf)/ mm2 |
保障加重応力 |
引張試験にて求めた降伏点又は耐力の88%〜94%に設定された荷重(保証荷重応力比)の値でありその荷重をボルト、小ねじにかけ15秒間保持し永久伸びが生じてはならない点の応力。 例) 4.6 耐力の94% 240×0.94≒225N (22,9kgf)/ mm2 10.9 耐力の88% 940×0.88≒830N (84,6kgf)/ mm2 |
せん断応力 (接線応力) |
図のようにボルトの軸に直角方向に荷重をかけせん断力が作用 するときに生じる応力。 通常せん断強度は引張強さの60%〜80%です。 |
トルク系数値 |
ボルト、ナットなどで品物を締め付けるとき、締め付けトルクの大きさは発生する軸力とボルトの呼び径の積に比例する。この比例定数をトルク係数値とする。 |
トルク締付法 |
ボルト、ナットなどで品物を締め付けるとき、締め付けトルクの大きさと軸力とが比例する性質を利用して、締め付け軸力を締め付け時のトルクによって管理する方法。 |
回転角締付法 |
ボルト、ナットなどで品物を締め付けるとき、ボルトまたはナットが締付けトルクによる回転する角度が締付け軸力に比例する性質を利用して、締付け軸力を締付け時の回転角によって管理する方法。 |
軸 力 |
ボルト、ナットなどで品物を締め付けて使用するとき、ボルトの軸方向に作用する引張り力。 |
応 力 |
材料が外力をうけた時、この外力に釣り合うために内部に生ずる抵抗力をいい、kg/
mm2で表わす。外力の種類によって引張応力、圧縮応力、曲げ応力、せん断応力などがある。 |
圧縮応力 |
圧縮荷重によって物体内部に生ずる抵抗。 |
圧縮荷重 |
互いに向いあう軸線方向の荷重。圧縮荷重により材料が破壊するときの応力を圧縮強さという。 |
衝撃過重 |
比較的短時間内に衝撃的に作用する荷重。 |
衝撃応力 |
衝撃荷重により物体内部に生ずる瞬間的最大応力。 |
引張荷重 |
軸線に沿って互いに反対方向に作用し、その材料に引張りを与えるような荷重をいう。 |
保証荷重 |
ねじ部品で品物を締め付けて使用する時に、それ以下の荷重での使用では有害な変形、その他不都合が起らないことを保証する荷重の大きさをいう。 |
せん断 |
材料の横断面に対し断面の方向に外力が加えられた時、破面を生ずるに要する応力。 |
硬さ |
他の物体をもっておしつけた時に、その物体の変形に対する抵抗力をいう。硬さを測るにはブリネル、ビッカース、ロックウエル、ショアなどの硬さ試験がある。 |
降伏点 |
軟鋼のような材料に荷重を加えると、一定の応力までは応力と歪みの関係は大体直線となるが、ある応力に達すると荷重が増加しないで歪みのみ増加する現象が現われる。この応力を降伏点という。 |
永久歪み |
材料に外力を加えれば変形を生ずるが、その材料の弾性限界をこせば、荷重を取り去っても原形に戻らず、変形つまり歪みを残す。これを永久歪みという。 |
弾性限界 |
材料に外力を加えたとき、これに確認できる最小の永久歪みを起こさせる応力をいう。普通0.03%、精密な場合で0.005%の永久歪みが起きたときの応力をもって実用上の弾性限界としている。 |
伸び |
棒に引張荷重を加えた時の荷重方向の永久変形をいう。変形前の長さℓ0 が逆ℓ1 に変化した時、(ℓ1- ℓ0)/ ℓ0の値(%)で表す。 |
絞り |
材料の属性、延性を示すもので、引張試験において試験片破断後における最小断面積とその原断面積との差の原横断面積に対する百分率(%)。 |
疲れ強さ |
金属が一定の応力繰返しに対して耐えうる最大応力。 |
1)鋼製ボルト・小ねじの機械的性質
@鋼製ボルト・小ねじの強度区分の表し方(JlS B 1051)
(ステンレス鋼強度区分の表し方はステンレス鋼の強度区分表示基礎知識を参照下さい。)
イ) 鋼製ボルト、小ねじ(JIS B 1051)の強度区分記号は次の1O段階に分類されている。
3.6 4.6 4.8
5.6 5.8 6.8
8.8 9.8 10.9 12.9
数字の意味は“小数点前の数字"は強度レベルを表示し“小数点後の数字"は呼び引張強さと呼点又は呼び
耐力との比の10倍を示します。この呼び方は一般的にポイント方式という。
口) 強度区分4T〜7Tボルト・小ねじの強度区分の表し方(附属書)
(この附属書は将来廃止となります)
4,5,6及び7の数字にTの文字を付け、4T、5T、6T及び7Tの記号です。
A鋼製ねじの使用温度範囲(J1S B 1051・1052-1991)
およそ一50℃〜300℃となりますが、温度が高くなると引張り強度が低下します。又温度が低くなると引張り強度
はあまり変わりませんが鋼の衝撃値が低下し、脆くなりますので注意が必要です。
一般ねじは耐熱性・耐寒性・耐食性も保証されていませんので、相手部材との関連も含めて注意が必要です。
下表の値は、常温を超え300℃に至るまでの4段階におけるおおよそのデータで、温度の上昇に従って機械的性質
が低下する目安を示したものです。
Bねじの最大締付けトルク(強度区分別)参考
C鋼製止めねじの強度区分の表し方(J1S B 1053)
(引張荷重を受けない止めねじ類似のおねじ部品)
強度区分:ふたけた数字とHの文字をこの順に組み合せて表す。
Eおねじ強度区分に対する機械的性質 (JIS B 1061 – 1991)
硬さ試験:鋼製ボルト、小ねじでは引張強さと強度との間に一定の関係があり硬さを測る事により硬度換算表から、
引張強さ(概略)を求めることができますので、短いとか小さい等の理由で引張試験機にかけられないねじで
は硬さは重要な指標になります。
くさび引張試験:くさび引張試験は、右図のようにおねじ部品の (くさび引張強さ) 頭部座面に硬化した角度aのくさびを入れ、
くさびの傾斜面におねじ部品頭部の一辺が接するようにし、軸方向に引張りの荷重を徐々に加えて行い、破
断したときの引張強さ及び破断の位置を調べます。
Fおねじの最小引張荷重 (メートル並目ねじ)
Gおねじの最小引張荷重 (メートル細目ねじ)
Hウイットおねじの最小引張荷重 (参考)
2) 摩擦接合用高力ボルトの機械的性質
@ボルト・ナット・座金の機械的性質
Aトルク系数値及び締め付けトルク値
・セットのトルク係数値は、次の式によって求める。
k = (T/ d×N )×1000
k:トルク係数値 T:トルク(ナットを締め付けるモーメント) N・m (kgf)
d:ボルトのねじ外径の基準寸法 (mm) N:ボルト軸カ N (kgf)
3) 鋼製ナットの機械的性質
ナットの強度区分
@強度区分4T〜12T……付属書
この付属書は将来廃止する。したがって、この付属書で規定する強度区分は、下表一(イ)の対応に準拠して、
本体で規定する強度区分に適宜切り替える。
強度区分の表し方
4、5、6、8、10及び12の数字にTの文字をつけて表す。
A新規格のナットの強度区分
この規格の範囲は1,6〜39mm、ねじの等級は6Hとします。材料は炭素鋼又は合金鋼とし、溶接性、耐食性、
30ぴC以上の耐熱性及び-50℃の耐寒性が要求されるものには適用しません。
例えば新規格の強度区分4の数字は、N/mm2の単位による呼び保証荷重応力の数字400の1/100を表します。